大臣祝辞
経済産業大臣 西村 康稔
 一般財団法人中東協力センターの創立 50周年を心よりお祝い致します。こうして記念すべき節目を迎えられたことは、ひとえに宮永俊一会長のリーダーシップと職員の皆様の弛まぬ努力の賜物であると思います。ここに敬意を表したいと思います。

 中東地域は世界3大宗教の発祥の地であるとともに、欧州・アフリカ・中央アジアとの結節点でもあります。我が国にとっては原油・天然ガスの主要な供給地域であり、今後は世界的なカーボンニュートラルの潮流を受けて、グリーン水素・アンモニアやグリーン金属の供給地としても一層、重要性を増していく見込みです。

 「中東」とひとまとめに呼ばれている地域ですが、それぞれの国を見ると多様性があり、それぞれの魅力に富んでいることも特徴です。湾岸産油国の中でも、サウジアラビアでは NEOM、紅海事業、リヤド市再開発等の巨大インフラプロジェクトの開発が進んでおり、UAE にはビジネス拠点として多数の日本企業が集積しています。他にも、UAE のムバダラ、カタールのQIA、サウジアラビアの PIF といった国富ファンドによる旺盛な投資意欲や、湾岸市場におけるデジタル・コンテンツや e スポーツの発展も注目すべき点です。トルコにはビジネスや製造業の拠点として多くの日系企業が進出しています。イスラエルではスタートアップとのイノベーション連携が盛んです。加えて、欧州・アジア・アフリカとの第三国連携など、中東は日本企業にとって様々なビジネスチャンスに溢れています。

 私は 1985 年(昭和 60 年)に経済産業省に入省し、資源エネルギー庁石油部計画課に配属されました。その時以来、中東政策、エネルギー政策は私の大切なライフワークの1つであり、米国留学時代にも、エジプト、バーレーン、トルコ、イラン等の中東諸国を旅行して回りました。ヨルダンの「ペトラ」、シリアの「パルミラ」、イランの「ペルセポリス」、エジプトの「ピラミッド」、「ラムセス2世像」、トルコの「カッパドキア」をすべて訪問した国会議員はいないのではないか、と自負しております。こうした経験も踏まえ、新しい時代に向けた更なる関係強化を推進していきたいと考えています。

 昨年 8 月に経済産業大臣を拝命して以降も、可能な限り中東地域に足を運んできました。2022 年末にはサウジアラビアとオマーンを訪問し、2023年1月にはUAEとヨルダン、9 月にはトルコ、イスラエル、パレスチナを訪問しました。その際には日本の主要企業や勢いのあるスタートアップに同行してもらい、数多くの覚書締結や相手国企業とのビジネス・マッチメイキングを行いました。各国で首脳表敬や閣僚と対話し、中東各国との信頼・協力関係の維持強化に取り組んできました。これからも、中東各国の経済・社会の多角化ニーズに応えつつ、Win-Win の取組を進めていきます。

 中東協力センターの歴史を振り返ると、第一次オイルショックの最中の 1973 年に設立されて以降、中東諸国との経済関係強化に向けて、日本と中東の官民を結びつける要(かなめ)として、日本からの投資促進や人材育成支援をはじめ、各現地事務所を通じたセミナーやワークショップ等のイベント開催、ミッション派遣・受け入れ等、数多くの事業を実施してこられました。これら一つ一つの事業が、現在の我が国の中東各国との良好な関係に大いに貢献されました。日本と中東の架け橋である中東協力センターが、これからも中東諸国との関係において、経済・産業・エネルギー分野等、幅広い協力関係を着実に深めていくことを期待しています。

 今、中東地域が緊迫しておりますが、中東協力センターのこうした地道な活動は必ずや中東地域の平和と安定につながるものと確信しております。

 今後とも、中東協力センターの幅広い活動・中東地域への貢献を心より期待して、私からのお祝いの言葉といたします。

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