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「第42回中東協力現地会議」  

  • 中東協力センターは、経済産業省の後援により、下記のとおり第42回中東協力現地会議を開催しました。
  • ■ 開催地:オーストリア共和国・ウィーン
  • ■ 会 場:Hilton Vienna
  • ■ 目的:中東・北アフリカ各国及び同関連地域に駐在の方々と、日本から参加される政府当局、民間企業、関係機関・団体等の方々が一堂に会し、その時々の政治・経済・社会情勢を踏まえ、我が国と中東・北アフリカ地域との協力関係のあり方やそれを具現化するためのアプローチについて議論する。
  • ■ テーマ:内外の要因で流動化する中東と日本の対応
  • ■ プログラム:PDFファイル
  • ■ 議論のポイント:
  • 1. 内外の要因により流動化する中東(中東情勢の俯瞰)
  • ≻ 2014年以来課題となってきたISについては、今年7月のイラクのモースル解放宣言に象徴されるように大きな進展が見られた一方、中東域内の大国ではそれぞれの事情により、体制の安定を揺るがす課題に直面している。
  • ・サウジアラビア:指導層の大胆な若返りが急速に進められたことで、王族内の反皇太子派グループの不満が拡大しているとの見方がある。
  • ・イラン:5月に再選されたローハニ大統領は、核合意の果実を国民に実感させる必要に迫られている。
  • ・トルコ:4月の国民投票で憲法改正が僅差で承認されたものの、トルコ経済を牽引する地域を中心に不満が残っており、クルド問題も抱える。
  • ・エジプト:昨年8月のIMFプログラム導入に起因する30%を超すインフレの収束と国民生活の安定が喫緊の課題となっている。
  • ≻ こうした内政の課題にかかわらず、イランの台頭とともに、シリア・イエメン・イラクといった近隣諸国において主要国が激しい主導権争いを繰り広げている。9月下旬にはイラクのクルド人自治区では独立を問う住民投票も計画されている。サウジアラビアもAssertiveな外交に転じ、現時点でこの主導権争いが収束する兆しを見出すことはできない。
  • ≻ 6月のカタール危機は、必ずしも「降って湧いた」ものでないとの指摘があったが、サウジアラビアとUAE等が外交関係断絶に加えて空域封鎖、入港禁止等の措置を採ったことは、LNGの輸入を中心にカタールと深い関係を有する我が国に衝撃を与えたことは事実である。これまでのところ現実的な支障は限られているが、カタール危機の解決には時間を要するだろう。中東域内の安定の象徴であったGCCに亀裂が入ったことで、我が国としてもこの地域の地政学的リスクに改めて注意を払っていく必要がある。
  • 2. 低下した原油価格水準と石油市場
  • ≻ 経済的要因で中東の持続的な安定・発展を妨げているのは、下げ止まりした原油価格である。現物需給の面では、OPECがロシアなど非加盟国主要国とともに、昨年来減産に取り組む一方、シェール・オイルの生産が増加傾向を見せている。需要面でも趨勢的には増加傾向が続いており、需給均衡に向けた動きが見られる。
  • ≻ 今世紀に入ってから、原油先物市場を通じて金融情勢が原油価格の形成に大きな影響を与えてきた。ドル相場の動向及びトランプ政権下での金融規制緩和に加えて、今後予想されるFRBの4.5兆ドルの資産削減の動きも、コモディティ価格に先高観が支配することを困難にしている。
  • ≻ こうした中で、原油価格は来年にかけて50ドル台前半で推移するとの見方が示された。
  • 3. 経済多角化への取り組みの加速
  • ≻ 石油収入が大幅に低下した中で、中東産油国は経済の多角化に真剣に取り組み始めている。我が国にとっても、得意とする非石油・ガス部門で中東産油国との関係を強化するチャンスが訪れていると言える。
  • ≻ 本年3月のサウジアラビア・サルマン国王来日に合わせ、「日本・サウジ・Vision 2030」が合意された。今後、両国それぞれのVision Officeが設置され、サウジアラビアでは経済特区や事業環境整備のあり方を検討するとのこと。これまでになかったサウジアラビアでの新たな、またスピード感を持った動きが結実するよう、中東協力センターとしても、個別投資案件の支援等を通じて協力を進める。
  • ≻ 中東産油国の財政と金融がタイト化する中、既存事業の民営化、新規発電所などのインフラをPPPで整備する動きが拡大している。それを成功に導くには、日本を含む外国の投資家がプロジェクトに参画しやすい透明性の高い制度的枠組み、リスクの公平な分担、最低限の保障等の整備が必要であり、サウジアラビアをはじめとする関係国政府に検討を促す必要性も指摘された。
  • 4. 中国の「一帯一路」構想とともに変わる国際競争環境と日本の対応
  • ≻ 今回の中東協力現地会議の最終セッションで、中国の「一帯一路」構想とともに変わる国際競争環境を取り上げたところ、各講演者から示唆に富んだコメントが寄せられた。
  • ≻ そこには、日本企業の手が届きにくい地域では中国企業と協業し、ビジネス・チャンスを積極的に拡大していくこと、また顧客の要望に応じて日本企業がパートナーとしてプロジェクトに参画し、中国企業の苦手分野を補完することも含まれる。他方、現在あるいは今後競合するインフラ分野では、日本の技術競争力を高めるだけでなく、日本企業のインフラ・マネジメントにも磨きをかけ、更にはソフトパワーとしての「Society 5.0」を実現させ、プロジェクトを通じて質の高い生活(Quality of Life)を提案することの必要性が指摘された。
  • ≻ プロジェクト・ファイナンスにおいて、中国の政府系金融機関がリーグテーブルの上位に出現する中、それら金融機関にもOECDと同じルールが適用されることが必要との認識が示された。
  • ≻ 国別に見ると、エジプトでは日本に対する評価と期待が依然として高い一方、サウジアラビアでは、原油の輸出市場として中国の存在感が急速に拡大し、双方が連携を深めようとしている。こうした動きを踏まえて、我が国としても中東諸国との関係の強化・発展を図る必要がある。
  • ≻ 日本政府は、「国際社会の共通の考えを十分に取り入れることで、『一帯一路』構想は環太平洋地域と世界の平和と繁栄に貢献することを期待する」としている。そのためには、我が国としてもトップ・セールスの推進のみならず、グローバルなビジョンの構築と発信を心掛け、その下でイコール・フィッティングを確保できる共通ルールづくりをリードしていく必要がある。
  • 以上