Title

「第38回中東協力現地会議」 開催報告 (PDF資料を掲載しました)

  • ■ 開催日:平成25年8月25日(日)、26日(月)
  • ■ 開催地:アラブ首長国連邦・ドバイ首長国
  • ■ 会 場: Intercontinental Dubai Festival City
  • ■ テーマ:我が国の成長戦略と中東・北アフリカにおけるビジネスチャンス

目的

本会議の目的は、中東・北アフリカ各国及び同関連地域に駐在の方々と、日本から参加される政府当局、民間企業、関係機関・団体等の方々が一堂に会し、その時々の政治・経済・社会情勢を踏まえ、我が国と中東・北アフリカ地域との協力関係のあり方やそれを具現化するためのアプローチについて議論するものです。

実施内容

二日間の会議では、DP Worldのモハメッド・シャラフCEOに現地の来賓として歓迎のご挨拶をいただくと同時に、経済産業省・佐々木顧問、日本総合研究所・寺島理事長、JETRO・石毛理事長、Strategic Analysis and Global Risk Assessment Centre ・トゥーカンCEO、日本エネルギー経済研究所・小山常務理事及び田中常務理事にご講演をいただきました。また、駐UAE加茂大使、駐サウジアラビア小寺大使、駐エジプト鈴木大使、駐イラン羽田大使によるカントリーレポート、現地駐在の方々によるビジネスレポート、インフラ輸出に関する民間部門の取り組みに関するご報告、JBIC・NEXI・JICA・JOGMEC・JETROの政府関係機関の皆様より、インフラ輸出支援を中心とする活動報告をいただきました。
今年の会議の議論は、三つのトピックに焦点が当てられました。各々のトピックについて議論の骨子をご紹介します。

1. 中東・北アフリカ諸国の現状分析

(1) UAE
■現在のUAEのキーワードは、穏健産油国、金融投資立国、中東「オアシス」国、機会提供国と言える。
・穏健産油国:「アラブの春」以降も政治的安定を維持し、世界主要国の中東でのパートナーとして実力充電中
・金融投資立国:世界最大規模の投資ファンドを通じて注がれる資金力
・中東「オアシス」国:中東北アフリカ地域における抜群の安定感を維持すると同時に、「シンガポール化」とでも表現できるような地域のハブ化
・機会提供国:諸外国に対してビジネス機会を広く提供する一方で、勤労意欲やアイデンティティ喪失への危機感が存在
■ほぼ順調にドバイショックを克服しつつある。
(2) サウジアラビア
■アラブ唯一のG20メンバー国、湾岸・アラブ・中東の大国、イスラムの盟主として、地域におけるサウジアラビアの重要性は増大している。
■GCC諸国とは政治・経済面の関係強化を図り、アラブ地域の安定に向けシリア,中東和平等の政治的議論をリードすると同時に、イエメン,エジプト,ヨルダン等に積極的な財政的支援を行なっている。
■サウジアラビア政府は外資に対し、自国民の雇用創出及び拡大、産業の多角化、知識の移転(「技術移転」から「知識移転」へ)を後押しする付加価値を求めている。
■そのためには、サウジアラビア市場の特徴、重要性を把握した上で、サウジアラビア独自のビジネス戦略を構築することが不可欠である。成長分野は、インフラ、消費財、医療・ヘルスケア、原子力・再生可能エネルギー、自動車(関連)、住宅等と多岐にわたる。また、サウジ人女性の社会進出が注目される。
(3) エジプト
■「7月3日政変」以降、軍・暫定政権とムスリム同胞団との対立が尖鋭化し、エジプトの伝統的なエスタブリッシュメント(軍、治安機構、高級官僚、主要メディア・産業)が復権した。
■今年7月の暫定政権の成立に関し、欧米諸国は軍の介入に対して懸念を表明。民主的政府への早急な移行を求め、強制排除などの暴力を非難している。
■その一方で、我が国がエネルギーを依存するサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートのアラブ主要国は暫定政権を支持し、総額120億ドルの資金援助を表明した。また、国内でも暫定政権は50%の支持を受けている。
■今後の着目点は、治安情勢の行方、軍・暫定政権と同胞団の和解の可否、民主主義的政治への復帰、経済動向である。
(4) イラン
■保守・穏健派のローハニ大統領が登場、「近隣諸国との関係拡大」「地域の平穏・安定創出及び緊張緩和」という対外的コメントから、緊張緩和に向けた動きへの期待が高まる。
■しかしながら、現状では前政権の「負の遺産」(強化された制裁、高インフレ・失業率、リアル価値の下落、財政収支の悪化等)が山積しており、ローハニ新大統領が「希望」を維持しつつ、核交渉、経済問題でどのような政策を取り得るか注目される。
■核問題では穏健なアプローチを指向するも原則(「核の権利」)は譲らず、イラン国民の間には事態打開・制裁解除に対する強い期待に応えると同時に、米欧との相互不信を克服し,強硬派含む国内を説得しつつ,米欧側と折り合える条件を見出せるかが課題。
■少しでも制裁緩和の可能性があることを踏まえて、欧州企業がアプローチを開始しているという情報(うわさ)があり、日本企業もプレゼンスだけは示すことも考慮する必要がある。
(5) カタール
■カタールの急激な経済成長の要因は、首長の強力なリーダーシップ、外資の経験・資金の積極的利用、対外債務の積極的かつ先行的な利用と言える。
■今後のカタールを形づくるマスタープランとして2008年に「Qatar national Vision 2030」を公表。さらに、その具体的な行動計画として「National Development Plan 2011-2016」を発表し、2016年までの投資計画を定めた。
■これらを踏まえ、今後のカタールでは「資源」「インフラ」「海外投資・海外展開」の分野が注目される。
(6) 北アフリカ
■アルジェリア、エジプト、チュニジア、モロッコの実質成長率は、アラブの春の期間を除いて常にプラスになっている。また、人口に占める若年層の比率が高く、消費市場として有望である一方で、社会不安の一因にもなっている。
■投資の特徴は、民間(Private Sector)による投資が圧倒的に少なく、ビジネスパートナーは現地政府系(Public Sector)となる場合が大部分である。他方、経済発展過程で民間ビジネスが拡大する余地が非常に大きい。
■このような北アフリカ諸国は、外貨獲得、若年人口増加、社会インフラ不足という課題を抱えているが、そこにビジネスチャンスが存在する。実際、日本企業に対する期待は高いが、日本側の関心が低く欧州企業に市場を席巻されている。

2. 世界のエネルギー情勢とシェール革命

■現下の国際エネルギー情勢の諸課題は、エネルギー価格の高騰と乱高下、アジアの途上国を中心に増大する世界のエネルギー需要とその影響、エネルギー供給制約に関する諸懸念等がある。因みに、中東産油国の原油生産コストは世界で最も安価であるが、「アラブの春」に代表される民主化運動に対抗するための財政支出が増大しており、望ましい原油価格について以前は75ドル/bdであったものが、最近では100ドル/bdに上昇している。
■その一方で、米国で進行しているシェール革命は、「蘇るアメリカ」への要素として、エネルギー戦略の主軸をシェールガス・オイル等の非在来型の化石燃料に置きつつある。これにより、米国は2010年代にエネルギー自給体制が確立され、中東へのエネルギー依存度は低下する可能性がある、という見方がある。ただし、シェール革命の中長期的(供給)ポテンシャルについては、慎重な見方も増えている。米国はGCCの安定にはコミットしているが、その他の中東地域の紛争に関与することからは解放される。
■石油化学については、シェール革命により、エチレンの原料として天然ガス由来のエタンを安価に調達できるようになり、米国の石油化学産業の復権が期待されている。
■このように、シェール革命は、世界の石油・天然ガス、その他のエネルギーの需給、経済・産業、地政学・国際関係に影響をもたらすが、非産油国にはプラスのインパクトを与える可能性がある。シェールガスの生産拡大により、米国の天然ガスの国内価格が低下している(2008年に12ドル/百万BTU水準であったものが、現在は3~4ドル/百万BTU)。長期契約・原油価格連動でLNGを購入している日本が米国から新たにLNG を輸入することで、量的には小さいものの、LNGの輸入価格の引き下げに好影響を与えることが期待される。
■これまでロシアはLNGの輸出を欧州に依存してきたが、欧州の景気低迷、再生可能エネルギーの拡大、米国からの石炭輸入によって、新たな輸出先の確保が必要になっている(シェール革命で欧州の天然ガス市場は10%以上の価格引き下げ)。そこで、将来的な需要増の見込まれるアジア太平洋市場への進出を積極化している。その主要マーケットである日本、中国、韓国は、輸入国として有利な価格を引き出すために戦略的な対応が必要である。
■中東産油国にとっても、欧米の石油・ガス需要が増えない中で、中国・インド・ASEANを中心に将来にわたって需要が増加するアジア市場取り込みが喫緊の重要課題となっている。
■2000年頃から経済成長、人口増加、国内の安価な製品価格により、中東産油国のエネルギー消費は増え続け、原油を増産しても輸出が増えないという現象が起こり、最近その傾向が顕著になっている。そのため、以前にも増して再生可能エネルギー、原子力、省エネルギーの導入が急がれており、日本に対する期待が高まっている。これを、中東との戦略的関係の構築に活用する必要がある。

3. 中東・北アフリカ諸国へのインフラ輸出戦略

■中東諸国との重層的な関係を構築するためには、産業協力、人材育成協力と並んでインフラ輸出は重要な手段となる。その一方でインフラ関連ビジネスはリスクが大きいため、政府による官民一体となった支援がより求められる。
■中東・北アフリカ地域はASEANに並ぶインフラ市場で、エネルギー、水、交通等の幅広い分野で、2020年までに4.3兆ドル規模のインフラ需要がある(年間750億~1,000億ドルとも言われている)。
【インフラプロジェクトの例】
・UAE: 都市鉄道(約700 億円(メトロ))、原発計画(残り12基:約6兆円規模)、ミルファ造水発電事業(規模約1,620億円)、各首長国を結び最終的には湾岸6か国とつながる予定のEtihad Rail
・サウジ:原発計画(16基:約8兆円規模)、リヤドやメッカ、ジェッダなど大都市でのメトロ建設メッカ〜マディーナ間の長距離鉄道のプロジェクト
・カタール: 2022年のFIFAワールドカップ開催に向けたインフラ投資総額約(約20兆円、新スタジアム、鉄道等)
・トルコ:シノップ原発事業(2兆円)
・エジプト:カイロの地下鉄延伸(円借327億円)やカイロ〜アレクサンドリア間の鉄道高速化を計画中
■厳しい国際競争の中で、受注実績においては欧米や中国・韓国等の競合企業に大きく水をあけられている現状にある。
【MENA地域での韓国の受注状況】
・韓国は・石油、ガス分野において、大型案件を発注しているサウジ、UAEのプロジェクトを「かためどり」している(大量受注によるバーゲニングパワーの活用)。
・プラント・エンジニアリング分野における日韓両国の仕向け国を見ると、重複はわずかにUAEのみ。
・一方で採算を度外し低価格で受注したプロジェクトにより業績が悪化する韓国企業も出ている。
■我が国企業が中東・北アフリカ地域でのインフラビジネスを促進するためには、価格競争力の強化やシステムを提供できる体制の構築に加え、「高度信頼性」、即ち顧客を尊重して約束を守る、トラブルに誠心誠意対応する等、日本企業ならではの信頼性を武器に他国との差別化を図り、地域密着型(現地関連会社)のサービスを提供することが求められる。
■また、グローバルなプロジェクトに迅速かつ的確に対応できる日本人ビジネマンの育成も不可欠である。
■インフラ整備の計画、案件形成段階での関与が必要である。以前から指摘されて、なかなか実現できない分野だが、特にサウジアラビア駐在の関係者からは、政府ないし関係機関に中長期の期間で専門家を派遣してほしい、という要望があった。

成果

今年の会議には日本、中東・北アフリカ地域他から過去最高の約400名の参加を得、活発な議論が行われました。その結果、中東・北アフリカ諸国の政治経済情勢やビジネス環境等を踏まえ、インフラ輸出や消費財マーケットとして有望な同地域における我が国のビジネス展開のあり方、シェール革命が今後の世界のエネルギー情勢に与えるインパクトを考察することができました。

第38回中東協力現地会議プログラム

プログラム 一日目:8月25日(日)
開会挨拶 (一財)中東協力センター会長    奥田 碩
来賓挨拶 Mr. Mohammed Sharaf, Group Chief Executive Officer, DP World, United Arab Emirates
来賓挨拶 駐アラブ首長国連邦    加茂 佳彦 大使
基調講演Ⅰ 「中東・北アフリカの現状と経済産業省の政策」
経済産業省    佐々木 伸彦 顧問
資料
(PDF)
休 憩
講演Ⅰ 「中東・北アフリカの地政学とビジネス環境の変化:リスクと危機への対処」
(一財)日本エネルギー経済研究所常務理事
田中 浩一郎    中東研究センター長
 
昼 食
講演Ⅱ 「The Middle East North Africa Region (MENA): A Risk Analysy Review」
Dr. Abdullah Toukan, Chief Executive Officer,
Strategic Analysis and Global Risk Assessment Centre
資料
(PDF)
ビジネスレポート ・サウジアラビア:みずほサウジアラビアカンパニー     岩田 直樹 社長
資料
(PDF)
・カタール:㈱三井住友銀行ドバイ支店    近藤 一宏 支店長 資料
(PDF)
・北アフリカ:㈱三菱東京UFJ銀行ドバイ支店    九門 康之エグゼクティブ・アドバイザー 資料
(PDF)
休 憩
カントリーレポート 外務省中東アフリカ局資料提供  「最近の中東・アフリカ情勢と我が国の政策」 資料(PDF)
駐アラブ首長国連邦    加茂 佳彦 大使 資料(PDF)
駐サウジアラビア     小寺 次郎 大使 資料(PDF)
駐エジプト    鈴木 敏郎 大使 資料(PDF)
駐イラン    羽田 浩二 大使 資料
(PDF)
懇親会 (JCCME主催)
プログラム 二目:8月26日(月)
基調講演Ⅱ 「エネルギー地政学の変化と日本の戦略」
(一財)日本総合研究所理事長・㈱三井物産戦略研究所会長
寺島 実郎 氏
 
休 憩
講演Ⅲ 「シェール革命と国際エネルギー情勢」
(一財)日本エネルギー経済研究所常務理事    小山 堅 首席研究員
資料
(PDF)
講演Ⅳ 「成長市場としての中東・北アフリカと日本企業のビジネス機会」
(独)日本貿易振興機構(JETRO)    石毛 博行 理事長
資料
(PDF)
休 憩
インフラ輸出に関する
民間部門の取り組み
モデレーター:日揮㈱理事(兼)JGCガルフ    嘉堂 亮一 副社長  
三井物産㈱執行役員 欧州・中東・アフリカ副本部長(兼)中東三井物産㈱
(一般社団法人日本貿易会 市場委員会委員長会社)
藤谷 泰之 社長
資料
(PDF)
東洋エンジニアリング㈱中東事務所    森 健 所長 資料
(PDF)
三菱重工業㈱グローバル戦略本部    植田 真五 国際事業推進部長 資料
(PDF)
千代田CCCエンジニアリングリミテッド    香田 圓 社長 資料
(PDF)
休 憩
政府関係機関活動報告 ㈱国際協力銀行(JBIC)取締役    矢島 浩一 資源・環境 ファイナンス部門長  
(独)日本貿易保険(NEXI)    稲垣 史則 理事 資料
(PDF)
(独)国際協力機構(JICA)    市川 雅一 理事 資料
(PDF)
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)    黒木 啓介 副理事長 資料
(PDF)
(独)日本貿易振興機構(JETRO)    山田 安秀 機械・環境産業部長 資料
(PDF)
閉会挨拶 (一財)中東協力センター理事長    北畑 隆生